「おもてなし」の心で地方を、日本を元気に

和倉温泉加賀屋 相談役 小田 禎彦さん、女将 小田 真弓さん

2015/07/27

立教卒業生のWork & Life

OVERVIEW

老舗旅館加賀屋 相談役の小田禎彦さんと、女将の真弓さんにお話を伺いました。

北陸新幹線の開通で東京から3時間半と便利になった石川県和倉温泉。古都金沢の奥座敷のこの温泉地で、国内はもとより世界にその名を知られる老舗旅館がある。

創業109年を迎える「加賀屋」。全客室数232室と大規模ながら、チェックイン時間に合わせ香が炊かれ、客室までの通路や部屋には生花が生けられているなど、「おもてなし」の心が隅々にまで行き渡る。そのサービスに魅せられる宿泊客は後を絶たず、「プロが選ぶ日本のホテル?旅館100選」(主催?旅行新聞新社)では、実に35年連続で総合日本一を獲得している。

この名旅館を切り盛りしてきたのが、加賀屋相談役の小田禎彦さんと女将の真弓さんだ。観光について学ぼうと上京した禎彦さんと、世界の国々の文化や歴史に興味のあった真弓さんは立教大の門をくぐり、伝統あるサークル「ホテル研究会」で出会った。

「夏休みには2カ月以上、地方のホテルでアルバイトを兼ねた研修に行きました。日給230円だったなぁ」と禎彦さんは懐かしそうに目を細める。卒業後、家業を継ぐため故郷に戻る禎彦さんに真弓さんはついて行こうと決める。しかし、東京のサラリーマン家庭で育った真弓さんにとって、旅館の仕事は勝手が分からないことだらけ。「先代女将の義母は口数は少ないけれど愛情深い人だった。ただただその背中を見て必死に学びました」

老舗の歴史は継承しながら、時代の変化に合わせた革新も必要と考える二人は、和風旅館でありながら高層ビル化した「能登渚亭」「雪月花」を次々とオープン。各フロアへの料理の自動運搬システムも導入した。「客室係の負担を減らすことできめ細やかなおもてなしを提供でき、お客さまにも満足していただける」と真弓さん。従業員が子育てしながらでも安心して仕事ができるよう、母子寮「カンガルーハウス」も設けた。

1981年に完成した12階建ての 能登渚亭。写真は、迎賓室「松柏」

「お客さまの喜ぶ顔を見るために、従業員にも気持ちよく働いてもらう。効率や金儲けばかりを求めない、いわば『ゆるやかなビジネス』を貫いてきた根底には、立教のキリスト教の教え、穏やかな校風に影響された部分があったかもしれません」と禎彦さん。さらに、こう続けた。

「観光業はソフトウェア産業。日本の『おもてなし』や、その地域ならではの体験、食材を提供することで、ハードウェア産業のものづくりとは違った価値を創りだし、地方、ひいては日本を元気にできるはず。そんな魅力ある観光業を先頭に立って引っ張る、ユニークでホスピタリティあふれる人財が、立教の学び舎から巣立ってくれることに期待しています」

和倉温泉 加賀屋
【住所】〒926-0192 石川県七尾市和倉町ヨ部80番地

プロフィール

PROFILE

小田禎彦さん、小田真弓さん

小田 禎彦(おだ さだひこ) さん
株式会社加賀屋 代表取締役相談役
【略歴】
1962年 立教大学経済学部卒業後、加賀屋入社
1979年 専務取締役を経て、代表取締役社長就任
2000年 同社代表取締役会長
2014年4月より現職

小田 真弓(おだ まゆみ) さん
加賀屋 女将
【略歴】
1961年 立教大学文学部卒業
1962年 禎彦氏と結婚し、3代目女将となる

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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