縦じまに染み込む伝統の「一体感」それは立教大学野球部の根本精神
立教大学体育会野球部監督 溝口 智成さん
2018/05/09
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
経済学部経営学科を卒業し、現在は体育会野球部の監督を務める溝口 智成さんのインタビューとショートムービーをご紹介します。
2017年6月12日、池袋で行われた優勝祝賀パレード
やりたいことを聞かれれば、迷いなく「母校の監督」と答えてきた。念願叶って2014年に立教大学体育会野球部第15代監督に就任した溝口智成さん。ミスタープロ野球こと、長嶋茂雄さん(読売巨人軍終身名誉監督)も袖を通した伝統の縦じまのユニフォームを身にまとい、監督として5年目を迎えた。
17年は東京六大学野球春季リーグ戦で1999年秋以来35季ぶり13度目の優勝。勝ち進んだ全日本大学野球選手権では1958年以来59年ぶり4度目の優勝を達成した。それは就任当初からの「一体感」を掲げた野球が結実した瞬間だった。くしくも昨年のチームスローガンは「戮力(りくりょく)同心(どうしん)」。全員で力を合わせ、心を一つにして一体感を持ち、前へ進もうという思いが込められている。
「一体感は、僕の根本精神ですし、立教大学野球部の根本精神とも言えると考えています。190人という大所帯の部員が4軍に分かれていますが、4軍だろうと1軍だろうと、野球に対する姿勢は同じであってほしい。『全員が同じ気持ちで、同じ目標に向かって一生懸命練習に取り組む風土がありますね』と言われるとうれしい。現実には、4軍の選手はスタンドでの応援になりますが、そこで本気で泣いて、本気でガッツポーズしてほしいという気持ちがあります」
溝口監督自身は、1989、90年の東京六大学野球秋季リーグ戦連覇の立役者で、特に4年次生だった90年は甲子園出場の経験があるようなスター選手が不在の中、主将としてリーダーシップを発揮、自
身はベストナインを獲得した。
「4年次生の時に優勝したチームは、メンバー一人一人の力がなかった(笑)。けれども、優勝した。昨年のチームは雰囲気が似ていて、これはいけるぞと。そして、大学日本一に輝きました。僕らの代はどうやって勝つのかと言ったときに、もっと一つのことを純粋に追い求めようとか、技術で勝てないんだったらトレーニングは他の大学よりやろうとか、話し合って決めて、一旦決めたことはとことんやりました。最後にどこかで野球の神様が微笑んだ実感があります。優勝できたら努力が結実して、あの努力が優勝につながったのだと、違う局面に立ったとしても言える。人生で壁にぶつかったときに〝あのような気持ちでやろう?とか、〝あのような行動を起こしてみよう?とか思えることはとても大きい」
チームがまとまると力が何倍にもなる、自身が学生時代に得た成功体験。監督として感じたのもやはり一体感の重要性だった。現在の縦じまのユニフォームは戦後初優勝を飾った1953年から着られている。歴代の先輩たちが築き上げてきた一体感のDNAが染み込んでいる、伝統の縦じまのユニフォームに憧れる高校球児は多い。
17年は東京六大学野球春季リーグ戦で1999年秋以来35季ぶり13度目の優勝。勝ち進んだ全日本大学野球選手権では1958年以来59年ぶり4度目の優勝を達成した。それは就任当初からの「一体感」を掲げた野球が結実した瞬間だった。くしくも昨年のチームスローガンは「戮力(りくりょく)同心(どうしん)」。全員で力を合わせ、心を一つにして一体感を持ち、前へ進もうという思いが込められている。
「一体感は、僕の根本精神ですし、立教大学野球部の根本精神とも言えると考えています。190人という大所帯の部員が4軍に分かれていますが、4軍だろうと1軍だろうと、野球に対する姿勢は同じであってほしい。『全員が同じ気持ちで、同じ目標に向かって一生懸命練習に取り組む風土がありますね』と言われるとうれしい。現実には、4軍の選手はスタンドでの応援になりますが、そこで本気で泣いて、本気でガッツポーズしてほしいという気持ちがあります」
溝口監督自身は、1989、90年の東京六大学野球秋季リーグ戦連覇の立役者で、特に4年次生だった90年は甲子園出場の経験があるようなスター選手が不在の中、主将としてリーダーシップを発揮、自
身はベストナインを獲得した。
「4年次生の時に優勝したチームは、メンバー一人一人の力がなかった(笑)。けれども、優勝した。昨年のチームは雰囲気が似ていて、これはいけるぞと。そして、大学日本一に輝きました。僕らの代はどうやって勝つのかと言ったときに、もっと一つのことを純粋に追い求めようとか、技術で勝てないんだったらトレーニングは他の大学よりやろうとか、話し合って決めて、一旦決めたことはとことんやりました。最後にどこかで野球の神様が微笑んだ実感があります。優勝できたら努力が結実して、あの努力が優勝につながったのだと、違う局面に立ったとしても言える。人生で壁にぶつかったときに〝あのような気持ちでやろう?とか、〝あのような行動を起こしてみよう?とか思えることはとても大きい」
チームがまとまると力が何倍にもなる、自身が学生時代に得た成功体験。監督として感じたのもやはり一体感の重要性だった。現在の縦じまのユニフォームは戦後初優勝を飾った1953年から着られている。歴代の先輩たちが築き上げてきた一体感のDNAが染み込んでいる、伝統の縦じまのユニフォームに憧れる高校球児は多い。
立教でよかったと思える4年間を 本気で取り組んだ経験は生きる
練習拠点は新座キャンパスにある野球部グラウンド
大学時代の学びは、卒業後に進んだリクルートでも生きた。
「大学時代に横川賢次監督の下で『普段の生活が大事だよ、あいさつをちゃんとしよう』と言われたことが社会に出てみると自分なりに意味付けられました。目配り、気配りはやはり大事です」
電話対応でもハキハキとした応対ぶりに、名乗らずとも「溝口君?」と言われるほどだったという。「1軍でなかったとしても『4年間あの野球部にいてよかった』と思える部員を1人でも多く社会に送り出したい」。
大学野球部の監督業を「学校の先生」に例える。「部員が190人もいて中小企業並みの経営者ですね、と言われてもしっくりこない。そのときに言うのは、学校の先生ですかねと。親が言えないこと、親が見えていないことに僕はグラウンドや寮で指針を与える役目」だと。そのため、「野球はあまり教えない。技術の話は2割くらい。礼儀?作法?物事の考え方と言われるような話が8割」。選手とは正面から向き合い、時には叱ることも。その翌日には笑顔で「言ったこと分かるか?」と叱られた理由を確認して、怒られた感情だけが残らないように選手をフォローすることを忘れない。
指導は言葉の持つ力を大事にする。
「響く言葉を発しないといけないと思いますし、言葉に意味付けをしますね。例えば、一体感が大事だというと、選手は『オッケー、一体感出して行こう』とすぐに口に出してきますが、油断しません(笑)。選手に一体感のある状態って何? と聞きます。一体感のある状態は、①元気、活気がある ②チームの方針を皆がやろうとしている ③お互いに関与しあっている、これが一体感のある状態だよ、と。そこまで言葉にします」
リーグ戦期間中は週に1度、キャンパス内のチャペルでの朝の礼拝に野球部員と共に自らも参加する。
「自主、自律、平等──学生時代は気付いていませんでしたが、『自由の学府』と言われる中で学んでいたのかなというのは社会人になってから感じます。禁止事項が多いわけではない中で、ルールを守ってちゃんとするべきことはしなきゃいけないよ、という精神は上の立場としては難しいですが、自分がそういう中でやってきたから考えられる。その環境の中でどうするべきかと自然と考える姿勢が身に付いたのでしょう。礼拝では野球や学生生活の糧になるような大事な言葉や考え方を聞いています。チャペルで過ごす時間は、立教らしいところでもあるので大事にしています」
リーグ戦開幕前にはベンチ入りメンバーにユニフォームを授けるユニフォーム推戴式もチャペルで行う。こうした立教のよき伝統は代々受け継がれている。
「大学時代に横川賢次監督の下で『普段の生活が大事だよ、あいさつをちゃんとしよう』と言われたことが社会に出てみると自分なりに意味付けられました。目配り、気配りはやはり大事です」
電話対応でもハキハキとした応対ぶりに、名乗らずとも「溝口君?」と言われるほどだったという。「1軍でなかったとしても『4年間あの野球部にいてよかった』と思える部員を1人でも多く社会に送り出したい」。
大学野球部の監督業を「学校の先生」に例える。「部員が190人もいて中小企業並みの経営者ですね、と言われてもしっくりこない。そのときに言うのは、学校の先生ですかねと。親が言えないこと、親が見えていないことに僕はグラウンドや寮で指針を与える役目」だと。そのため、「野球はあまり教えない。技術の話は2割くらい。礼儀?作法?物事の考え方と言われるような話が8割」。選手とは正面から向き合い、時には叱ることも。その翌日には笑顔で「言ったこと分かるか?」と叱られた理由を確認して、怒られた感情だけが残らないように選手をフォローすることを忘れない。
指導は言葉の持つ力を大事にする。
「響く言葉を発しないといけないと思いますし、言葉に意味付けをしますね。例えば、一体感が大事だというと、選手は『オッケー、一体感出して行こう』とすぐに口に出してきますが、油断しません(笑)。選手に一体感のある状態って何? と聞きます。一体感のある状態は、①元気、活気がある ②チームの方針を皆がやろうとしている ③お互いに関与しあっている、これが一体感のある状態だよ、と。そこまで言葉にします」
リーグ戦期間中は週に1度、キャンパス内のチャペルでの朝の礼拝に野球部員と共に自らも参加する。
「自主、自律、平等──学生時代は気付いていませんでしたが、『自由の学府』と言われる中で学んでいたのかなというのは社会人になってから感じます。禁止事項が多いわけではない中で、ルールを守ってちゃんとするべきことはしなきゃいけないよ、という精神は上の立場としては難しいですが、自分がそういう中でやってきたから考えられる。その環境の中でどうするべきかと自然と考える姿勢が身に付いたのでしょう。礼拝では野球や学生生活の糧になるような大事な言葉や考え方を聞いています。チャペルで過ごす時間は、立教らしいところでもあるので大事にしています」
リーグ戦開幕前にはベンチ入りメンバーにユニフォームを授けるユニフォーム推戴式もチャペルで行う。こうした立教のよき伝統は代々受け継がれている。
チャペルで学んだ「自主、自律、平等」 失敗した時こそ問われる人間の真価
東京六大学野球秋季リーグ優勝を伝える『立教』巻頭グラビア(左:1989年 右:1990年)
社会に出る前に身に付けてほしいのが「頑張れる力」だという。「社会に出たらうまくいかないことの方が多い。失敗したときこそ前を向いていくとか、そういう時に役に立つ頑張れる力を備えてほしいですね。失敗して下を向く選手が非常に多いと感じています。バッターは10回中7回失敗してもいいんだぞ、と。10回打席に立って2割で凡人、3割だったらいい打者なのに、7回の失敗に引っ張られてしまう。『野球は失敗することが普通。うまくいかないときに人間の真価が問われるよ』とよく言います」。野球を通じた人間形成。リクルート時代に人材育成のプロとして活躍してきた溝口さんならではの学生へのエールといえる。
昨年、大学日本一に輝いた試合は長嶋茂雄さんが神宮球場に応援に駆けつけ、優勝の瞬間の歓喜の姿は多くのメディアで大々的に報じられた。あらためて勝つことの素晴らしさを痛感した試合だった。
「長嶋さんは野球界にとってすごい存在。あの時に思ったのは、観戦に来ていただける試合ができてよかったなと。大学野球日本一になり世間に立教大学の野球部って強いんだと知れ渡りました。注目される野球部、常に優勝に絡む強いチームにしたいんです」
常勝チームを目指しながら、社会に出ても通用する力を養う。立教にはさまざまなフィールドで活躍できる多様な人材を育てる土壌がある。
昨年、大学日本一に輝いた試合は長嶋茂雄さんが神宮球場に応援に駆けつけ、優勝の瞬間の歓喜の姿は多くのメディアで大々的に報じられた。あらためて勝つことの素晴らしさを痛感した試合だった。
「長嶋さんは野球界にとってすごい存在。あの時に思ったのは、観戦に来ていただける試合ができてよかったなと。大学野球日本一になり世間に立教大学の野球部って強いんだと知れ渡りました。注目される野球部、常に優勝に絡む強いチームにしたいんです」
常勝チームを目指しながら、社会に出ても通用する力を養う。立教にはさまざまなフィールドで活躍できる多様な人材を育てる土壌がある。
溝口 智成監督のインタビュー動画
溝口監督に、選手たちの思いや学生時代の経験について語っていただきました。どうぞご覧ください。
※本記事は季刊「立教」244号(2018年4月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
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プロフィール
PROFILE
溝口 智成
1991年、立教大学経済学部経営学科卒業。
2014年より、立教大学体育会野球部 監督。
1991年4月、株式会社リクルート入社、野球部に所属。1997年、選手引退、キャリア開発に関わる業務を担当。2014年、退職して、現職。
立教大学での現役時代のポジションは一塁手。1989、90年の東京六大学野球秋季リーグで連覇、ともにベストナイン獲得。2017年、監督として東京六大学野球春季リーグ優勝、全日本大学野球選手権優勝。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
溝口監督のインタビュー動画はこちら