日本の製品を世界に広めたい——
立教時代からの思いを
マーケティングの経験をもとに実現する
株式会社カネボウ化粧品 代表取締役 社長執行役員 村上 由泰さん
2019/09/02
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
2018年1月、村上由泰さんは株式会社カネボウ化粧品代表取締役社長執行役員に就任した。立教大学経済学部を卒業後、花王株式会社に入社。営業、スキンケアのマーケティング、海外駐在でキャリアを積み、現在は花王のグループ会社であるカネボウ化粧品の社長であるとともに、花王グループの化粧品事業全体を統括している。
世界を舞台に仕事をしてみたい——。そんな夢を抱き、立教の門をくぐった。「立教は英語に強くグローバルなイメージがありましたし、自由でスマートな校風も気に入っていました」と、村上さんは振り返る。英語力の強化に加え、ゼミでは和田八束教授(現?名誉教授)の財政学を専攻。ゼミ長も務めた。
「私が学生だった1980年代は、ベストセラーとなったアメリカの社会学者エズラ?F?ヴォーゲルによる著書『ジャパンアズナンバーワン』に象徴されるように、日本の製造業がアメリカに追いつけ追い越せで、勢いがありました。そうした元気な日本を感じながら、授業やゼミでの学びを通じ、漠然とではありますが『日本の製品を世界に広めたい』という思いを抱くようになりました」
立教では「4年間、勉強はそれなりに、アルバイトは結構まじめにやり通しました」。また、ドイツ語のクラスで一緒になった仲間とよく遊んだのは懐かしい思い出だと話す。「いまの学生ほど勉強しなかったなぁ。タイカ(雀荘)でカレー食べていました」と、懐かしそうに笑う。
信頼できる仲間に出会い、多くの経験を積んだ村上さんは、就職活動では初志貫徹でメーカーを志望。そして、花王に入社を決める。
「働くからには業界トップの会社で、という思いがありました。また、生活に密着した商品を形にし、国内はもちろん世界の消費者に届ける。そこに魅力と強いやりがいを感じました」
「私が学生だった1980年代は、ベストセラーとなったアメリカの社会学者エズラ?F?ヴォーゲルによる著書『ジャパンアズナンバーワン』に象徴されるように、日本の製造業がアメリカに追いつけ追い越せで、勢いがありました。そうした元気な日本を感じながら、授業やゼミでの学びを通じ、漠然とではありますが『日本の製品を世界に広めたい』という思いを抱くようになりました」
立教では「4年間、勉強はそれなりに、アルバイトは結構まじめにやり通しました」。また、ドイツ語のクラスで一緒になった仲間とよく遊んだのは懐かしい思い出だと話す。「いまの学生ほど勉強しなかったなぁ。タイカ(雀荘)でカレー食べていました」と、懐かしそうに笑う。
信頼できる仲間に出会い、多くの経験を積んだ村上さんは、就職活動では初志貫徹でメーカーを志望。そして、花王に入社を決める。
「働くからには業界トップの会社で、という思いがありました。また、生活に密着した商品を形にし、国内はもちろん世界の消費者に届ける。そこに魅力と強いやりがいを感じました」
会社の存在意義とは?ブランドの存在意義とは?常に「Why?」を問い続ける
「ビオレ」マネジメント時代は、ヨーロッパでの販売拡張を手掛けた。ヘルシンキにて(左から2番目)
5年間にわたる仙台での営業職の後、念願のマーケティング担当に。2004年には化粧品ブランド「ソフィーナ」のブランドマネジャーに就任するなど、化粧品事業のマーケターとしてキャリアを積んだ。また一方で、海外ビジネスの経験も重ねた。30代で、マーケティング部長として中国?上海に駐在する。学生の頃から切望していた海外勤務だった。とはいえ、戸惑いもあったという。
「当時の中国でのビジネスの難しさは理解していましたし、家族を連れていく不安もありました」
当時の思いをそう吐露するが、仕事は待ったなし。言葉も文化も違う現地の人を相手に、意思疎通を図りながらビジネスをしていかなければならない。「まさに異文化コミュニケーションの難しさ、大変さに直面しました」。村上さんは中国での日々を振り返り、こう続けた。
「英語をはじめとする外国語ができるに越したことはありません。ただし、それ以前に文化やバックグラウンドが異なる人たちとコミュニケーションを図る力があるかどうかがとても大事。国は違っていても『人対人』の関係を築く上で、相手をリスペクトする気持ちを持って真摯に接することの大切さを学ぶことができました」
「当時の中国でのビジネスの難しさは理解していましたし、家族を連れていく不安もありました」
当時の思いをそう吐露するが、仕事は待ったなし。言葉も文化も違う現地の人を相手に、意思疎通を図りながらビジネスをしていかなければならない。「まさに異文化コミュニケーションの難しさ、大変さに直面しました」。村上さんは中国での日々を振り返り、こう続けた。
「英語をはじめとする外国語ができるに越したことはありません。ただし、それ以前に文化やバックグラウンドが異なる人たちとコミュニケーションを図る力があるかどうかがとても大事。国は違っていても『人対人』の関係を築く上で、相手をリスペクトする気持ちを持って真摯に接することの大切さを学ぶことができました」
花王グループ化粧品事業成長戦略発表会でのプレゼン(2018年5月)
苦労した分、得たものは大きかった。上海での経験が、その後、マレーシア現地法人の社長兼CEOというキャリアアップにつながる。「グローバルで通用する価値あるブランドを作ることが重要だと、海外駐在を経てより強く感じることができました」と村上さん。カネボウ化粧品を含めた花王グループの化粧品事業全体を統括する立場となり、その目は常に世界を見据えている。
村上さんが仕事をする上で最も大切にしていること、それは「Whyを考える」。それもまた、世界を経験して得た思考だ。
「花王は日本ではそれなりの大きな会社ですが、一歩日本を出れば、ちっぽけな存在です。世界の名だたるグローバル企業や強力なメガブランドがひしめく中で、本当にこの会社は必要とされているのか、この商品は必要とされているのか、常に自社が存在する意義や目的を考えていました。
現在も、カネボウ化粧品という会社やブランド、その商品の存在意義は何なのか?社会の中でどのように役に立っているのか?——日々、自問自答しています。〝マーケティングとは、新しい価値を創造すること?、私は、会社経営もマーケティングだと考えています」
村上さんが仕事をする上で最も大切にしていること、それは「Whyを考える」。それもまた、世界を経験して得た思考だ。
「花王は日本ではそれなりの大きな会社ですが、一歩日本を出れば、ちっぽけな存在です。世界の名だたるグローバル企業や強力なメガブランドがひしめく中で、本当にこの会社は必要とされているのか、この商品は必要とされているのか、常に自社が存在する意義や目的を考えていました。
現在も、カネボウ化粧品という会社やブランド、その商品の存在意義は何なのか?社会の中でどのように役に立っているのか?——日々、自問自答しています。〝マーケティングとは、新しい価値を創造すること?、私は、会社経営もマーケティングだと考えています」
人生に無駄な経験はない すべてが自分自身の成長の糧になる
経営者として重責を担う立場にあるいま、大学時代の友人たちと過ごすことが、心からリラックスできる大切にしている時間だ。
「ドイツ語のクラスの仲間とは卒業してからも絆が続き、新年会にゴルフにと、よく集まっています。仕事上での付き合いとは違う、家族のようなホッとできる友人たちですね」
社長としての今後の展望について、村上さんはこう語る。
「変化しないことは高いリスクになる時代です。不連続なチャレンジによって変化を作っていきたい。そして、花王の強みであるサイエンスの力、いわば『理性』と、カネボウ化粧品が得意とする『感性』を融合させ、独自の尖った化粧品事業を展開する。それこそが花王が化粧品事業を展開している意義、つまりWhyの答えだと考えています。カネボウ化粧品を中心とした花王の化粧品事業を、グローバルで存在感のある事業体に成長させること。それが、私の夢です」
さらに、こう言葉をつなぐ。
「化粧品は人を元気にしたり、社会を明るくできる力を持っています。私たちの願いは、私たちが磨き上げた個性あるブランドと独自のイノベーティブな商品を通じ、世界中のお客さまに輝きを与え、笑顔になっていただくこと。そのためには、まずは商品やサービスを届ける社員に誇りを持ってほしい。社員一人一人がワクワクする会社、働くことで元気になれる会社にしていきたいと考えています」
最後に、立教の、そして社会人の先輩として、現役学生にメッセージを……とお願いすると、「経験に無駄はない。必ず次につながるから」とニッコリ。そして、こんな言葉を贈ってくれた。
「私自身、初めは戸惑いの多かった上海での海外駐在も、そこで経験したことがその後の大きな力となりました。人生に無駄なことなんてない。むしろ失敗や試練こそ財産。さまざまな経験一つ一つが、成長への糧になるのです」
「ドイツ語のクラスの仲間とは卒業してからも絆が続き、新年会にゴルフにと、よく集まっています。仕事上での付き合いとは違う、家族のようなホッとできる友人たちですね」
社長としての今後の展望について、村上さんはこう語る。
「変化しないことは高いリスクになる時代です。不連続なチャレンジによって変化を作っていきたい。そして、花王の強みであるサイエンスの力、いわば『理性』と、カネボウ化粧品が得意とする『感性』を融合させ、独自の尖った化粧品事業を展開する。それこそが花王が化粧品事業を展開している意義、つまりWhyの答えだと考えています。カネボウ化粧品を中心とした花王の化粧品事業を、グローバルで存在感のある事業体に成長させること。それが、私の夢です」
さらに、こう言葉をつなぐ。
「化粧品は人を元気にしたり、社会を明るくできる力を持っています。私たちの願いは、私たちが磨き上げた個性あるブランドと独自のイノベーティブな商品を通じ、世界中のお客さまに輝きを与え、笑顔になっていただくこと。そのためには、まずは商品やサービスを届ける社員に誇りを持ってほしい。社員一人一人がワクワクする会社、働くことで元気になれる会社にしていきたいと考えています」
最後に、立教の、そして社会人の先輩として、現役学生にメッセージを……とお願いすると、「経験に無駄はない。必ず次につながるから」とニッコリ。そして、こんな言葉を贈ってくれた。
「私自身、初めは戸惑いの多かった上海での海外駐在も、そこで経験したことがその後の大きな力となりました。人生に無駄なことなんてない。むしろ失敗や試練こそ財産。さまざまな経験一つ一つが、成長への糧になるのです」
※本記事は 季刊「立教」249号(2019年7月発行) をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
村上 由泰さん
花王株式会社 執行役員 化粧品事業分野担当
Molton Brown Limited Chairman
1986年、経済学部経営学科卒業
1986年4月、花王株式会社入社。2004年4月、化粧品事業本部ソフィーナブランドマネジャー。
2009年3月、ビューティケア事業ユニットプレステージ化粧品事業グループ部長(アジア担当)。
2011年3月、花王マレーシアPresident & CEO。
2014年3月、スキンケア?ヘアケア事業ユニットスキンケア事業グループ長。
2018年1月より、現職。