グループの総合力を発揮し、唯一無二のプロフェッショナルファームへ
デロイト トーマツ グループ CEO 木村 研一さん
2024/01/15
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
会計監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーなどの機能を備え、現在、グループ全体で約2万人のプロフェッショナルを擁するデロイト トーマツ グループ。国内最大級のプロフェッショナルファームで2022年6月、最年少でグループCEOに就任したのが木村研一さんだ。
デロイト トーマツ グループの講堂にて
「私自身、CEOになる気はなかったのですが……」とほほ笑む木村さんは大学時代に公認会計士の勉強に取り組み、そのキャリアを歩み始めた。難関資格として知られるが、「決して勉強熱心ではなく、大学1~3年次はスキーに明け暮れました」。立教大学公認団体「アルンダー基礎スキークラブ」(当時)に所属し、冬は大学の試験期間を除き、ずっとスキー場にこもっていたという。
「長野県の旅館に寝泊まりし、昼間はスキー教室のインストラクターのアルバイトをして過ごすんです。その間、サークルの合宿が何回かあって、仲間とスキーを満喫しました。シーズンオフも、ランニングや筋トレなどの陸上トレーニングに忙しく、学業成績は芳しくなかったですね(笑)」
4年次になり、「このままでは就職が危うい」と感じ、公認会計士の勉強を開始。
「経済的に余裕はなかったので何年も浪人するわけにはいかず、必死に勉強しました。幸いにも1年数カ月の勉強の末、試験に合格することができました」
大学を卒業した1991年には監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)に入社。公認会計士として登録されるには3年以上の実務経験が必要(当時)であり、1995年に晴れて公認会計士となる。
その翌年、トーマツを退社。尊敬していた上司が個人事務所を立ち上げることになり、「間近で学べるなら良い機会だと思って」転職を決意する。その事務所は、企業の上場やM&Aのサポートが主業務だった。「このような事務所は当時珍しく、貴重な経験をさせていただいた」というものの、4年で退社することに。
「個人事務所だと、どうしても仕事のスケールに限界を感じてしまって。そんな時にトーマツに新しい部署ができ、大規模なプロジェクトに参加しないかと声をかけてもらったのです」再入社後、個人事務所で働いた経験は非常に大きかったと気付くことになる。
「小規模な事務所だったからこそ、トーマツのような大手の長所がよく理解できたんです。多彩な機能があり、相手の課題に合わせてソリューションを組み合わせて提案できることは、大手ならではの武器だと実感しました」
再入社後は、こうした強みをアピールした営業活動に精を出す。同社では会計士が自ら営業を行うが、「顧客の悩み相談に乗り、多角的にソリューションを提案し、大型案件の受注につなげる」というのが木村さんのスタイルだった。
「同じような形で営業を行っている人は周りにおらず、これが功を奏したのです。前職で幅広い領域の業務を経験していたので、何を聞かれても大体のことは分かるというのも大きかったですね」
こうして仕事を受注しては、監査やコンサルティング、上場?M&Aのサポートなどの業務に没頭した。「一つ大きな案件を担当すると、その会社に詳しくなるので、また別の依頼につながることが多いんです。その繰り返しであっという間に時が過ぎていきました」
「長野県の旅館に寝泊まりし、昼間はスキー教室のインストラクターのアルバイトをして過ごすんです。その間、サークルの合宿が何回かあって、仲間とスキーを満喫しました。シーズンオフも、ランニングや筋トレなどの陸上トレーニングに忙しく、学業成績は芳しくなかったですね(笑)」
4年次になり、「このままでは就職が危うい」と感じ、公認会計士の勉強を開始。
「経済的に余裕はなかったので何年も浪人するわけにはいかず、必死に勉強しました。幸いにも1年数カ月の勉強の末、試験に合格することができました」
大学を卒業した1991年には監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)に入社。公認会計士として登録されるには3年以上の実務経験が必要(当時)であり、1995年に晴れて公認会計士となる。
その翌年、トーマツを退社。尊敬していた上司が個人事務所を立ち上げることになり、「間近で学べるなら良い機会だと思って」転職を決意する。その事務所は、企業の上場やM&Aのサポートが主業務だった。「このような事務所は当時珍しく、貴重な経験をさせていただいた」というものの、4年で退社することに。
「個人事務所だと、どうしても仕事のスケールに限界を感じてしまって。そんな時にトーマツに新しい部署ができ、大規模なプロジェクトに参加しないかと声をかけてもらったのです」再入社後、個人事務所で働いた経験は非常に大きかったと気付くことになる。
「小規模な事務所だったからこそ、トーマツのような大手の長所がよく理解できたんです。多彩な機能があり、相手の課題に合わせてソリューションを組み合わせて提案できることは、大手ならではの武器だと実感しました」
再入社後は、こうした強みをアピールした営業活動に精を出す。同社では会計士が自ら営業を行うが、「顧客の悩み相談に乗り、多角的にソリューションを提案し、大型案件の受注につなげる」というのが木村さんのスタイルだった。
「同じような形で営業を行っている人は周りにおらず、これが功を奏したのです。前職で幅広い領域の業務を経験していたので、何を聞かれても大体のことは分かるというのも大きかったですね」
こうして仕事を受注しては、監査やコンサルティング、上場?M&Aのサポートなどの業務に没頭した。「一つ大きな案件を担当すると、その会社に詳しくなるので、また別の依頼につながることが多いんです。その繰り返しであっという間に時が過ぎていきました」
多彩な機能を組み合わせ価値を提供する
一心不乱に仕事に励む中、転機となったのが2014年から1年間赴任したロンドン事務所での経験だった。
「公認会計士や会計事務所という存在はイギリスが発祥です。会計事務所の経営という観点では日本より100年以上進んでいます。多様なビジネスモデルを開発し、顧客との深い関係を、いかに長く構築するかという仕組みを常に考えている。こうした最先端の知見を現地の方に聞いて回り、日本に持ち帰りました」
「公認会計士や会計事務所という存在はイギリスが発祥です。会計事務所の経営という観点では日本より100年以上進んでいます。多様なビジネスモデルを開発し、顧客との深い関係を、いかに長く構築するかという仕組みを常に考えている。こうした最先端の知見を現地の方に聞いて回り、日本に持ち帰りました」
若い時に突き詰めて学んだことは自分を支える一生の武器となる
2019年、デロイト トーマツ サイバー合同会社設立に関する記者会見の様子
帰国後はリスクアドバイザリーのリーダーとなり、特に注力したのはサイバーセキュリティーの分野だ。顧客企業をサイバーリスクの脅威から守る業務を強化するために、2019年に分社化して代表を務めることに。その分野に秀でた人材の採用を強化したり、スペシャリストが評価される仕組みを作ったりとあらゆる手を尽くした。「賭けだった」というが、DXが加速する時代のニーズを捉え、大きな成長を遂げている。
そして2022年、グループCEOに。「就任した時に感じたのですが、若い時にトーマツに再入社した時の気持ちとあまり変わっていないんですよ。それは、総合プロフェッショナルファームとして多彩な機能をいかに組み合わせて価値を提供するか、ということです」
現在、同グループには「監査?保証業務」「リスクアドバイザリー」「コンサルティング」「ファイナンシャルアドバイザリー」「税務?法務」の5つの機能があり、それぞれが縦横無尽にコラボレーションしながらビジネスを展開している。
「各分野で、ピカピカに磨き上げられたプロフェッショナルたちが活躍していますが、横断的なビジネスを実現できるとやりがいを感じます。一つ一つの分野では競合が存在しますが、組み合わせると唯一無二の会社になれると思っています」
そして2022年、グループCEOに。「就任した時に感じたのですが、若い時にトーマツに再入社した時の気持ちとあまり変わっていないんですよ。それは、総合プロフェッショナルファームとして多彩な機能をいかに組み合わせて価値を提供するか、ということです」
現在、同グループには「監査?保証業務」「リスクアドバイザリー」「コンサルティング」「ファイナンシャルアドバイザリー」「税務?法務」の5つの機能があり、それぞれが縦横無尽にコラボレーションしながらビジネスを展開している。
「各分野で、ピカピカに磨き上げられたプロフェッショナルたちが活躍していますが、横断的なビジネスを実現できるとやりがいを感じます。一つ一つの分野では競合が存在しますが、組み合わせると唯一無二の会社になれると思っています」
今につながる立教での経験や学び
立教大学時代。「アルンダー基礎スキークラブ」の仲間と
立教のスキー仲間とは今も頻繁に交流している。「私がCEOになった時も特にリアクションはなく、フラットな関係が心地良いですね」と笑う。
「こうした関係を築けたのは、スキーという活動の特性かもしれません。冬に“山ごもり”すると仲間と一緒に過ごす時間が長いので、いろいろなことを語り合うんです。自分と異なる考え方にも触れられる。今の自分のベースができたのはその時かもしれません」
他にも立教で学んだことで、忘れられない言葉がある。「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」という意味の聖書の一節だ。「キリスト教概論」の授業で触れ、「この考え方は仕事の基本姿勢となりました」。
最後に、自らの経験を踏まえ、立教生に力強くメッセージを送った。
「一つ二つ、学生時代に何かを突き詰めてほしい。私の場合は公認会計士の勉強でしたが、若い時に懸命に学んだことは忘れづらいものです。それが一生の武器となって自分を支えてくれるでしょう」
「こうした関係を築けたのは、スキーという活動の特性かもしれません。冬に“山ごもり”すると仲間と一緒に過ごす時間が長いので、いろいろなことを語り合うんです。自分と異なる考え方にも触れられる。今の自分のベースができたのはその時かもしれません」
他にも立教で学んだことで、忘れられない言葉がある。「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」という意味の聖書の一節だ。「キリスト教概論」の授業で触れ、「この考え方は仕事の基本姿勢となりました」。
最後に、自らの経験を踏まえ、立教生に力強くメッセージを送った。
「一つ二つ、学生時代に何かを突き詰めてほしい。私の場合は公認会計士の勉強でしたが、若い時に懸命に学んだことは忘れづらいものです。それが一生の武器となって自分を支えてくれるでしょう」
※本記事は季刊「立教」266号(2023年11月発行)をもとに再構成したものです。バックナンバーの購入や定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
木村 研一
1991年 経済学部経済学科卒業
公認会計士。1991年監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)入社。2000年再入社。2015年から2021年までデロイト トーマツ グループ リスクアドバイザリー ビジネスリーダー、有限責任監査法人トーマツ執行役。2019年から2021年までデロイト トーマツ リスクサービス株式会社代表取締役社長、デロイト トーマツ サイバー合同会社代表執行者。2022年6月より現職。