世界を変えたGAFAの「大胆なビジョン」とAI戦略
ビジネスデザイン研究科 田中 道昭 特任教授
2019/04/26
研究活動と教授陣
OVERVIEW
巨大テクノロジー企業であるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の動向は、グローバル経済や人々の暮らしに大きな影響を及ぼしています。GAFAが世界を席巻するに至った理由、今後のビジネスの鍵を握るAI活用について、田中道昭特任教授に伺いました。
GAFAが巨大企業になった理由
※『GAFA×BATH─米中メガテックの競争戦略』(著者:田中道昭)をもとに作成。
GAFAに共通するのは、ビジネスや情報発信の基盤となる製品やサービスを提供する「プラットフォーマー」である点です。他の企業との決定的な違いは「大胆なビジョンを掲げ、高速で※PDCAを回していく」というビジネス手法にあります。大胆なビジョンとは、「事業を通じて社会的な問題と対峙し、どのような新しい価値を提供していくか」。それを徹底的に考えた上で、最低限の計画を立てたら実行に移し、事業を走らせながら軌道修正をしていくわけです。
さらに、大胆なビジョンと分かちがたく結び付いている「ミッション」が非常に明確である点もGAFAの特色です。その根底にあるのは創業者の「事業を通じて社会を変革していく」
という使命感であり、この使命感の大きさが企業規模を決定付けていると言っても過言ではありません。
GAFAの生命線とも言えるこうしたビジョンやミッションは、社会や人間に対する深い洞察から生まれるものであり、それには教養、つまりリベラルアーツが欠かせません。「人は、社会は、どうあるべきか」「自分は何をすべきか」という深淵なる考察が、ビジネスの深さに直結しているのです。
※PDCA=「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の頭文字をとったもの。
さらに、大胆なビジョンと分かちがたく結び付いている「ミッション」が非常に明確である点もGAFAの特色です。その根底にあるのは創業者の「事業を通じて社会を変革していく」
という使命感であり、この使命感の大きさが企業規模を決定付けていると言っても過言ではありません。
GAFAの生命線とも言えるこうしたビジョンやミッションは、社会や人間に対する深い洞察から生まれるものであり、それには教養、つまりリベラルアーツが欠かせません。「人は、社会は、どうあるべきか」「自分は何をすべきか」という深淵なる考察が、ビジネスの深さに直結しているのです。
※PDCA=「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」の頭文字をとったもの。
GAFAによるAI活用の特色とは。
無人レジ?コンビニ「アマゾン?ゴー」は、入店時(左)にゲートにスマホをかざすだけ。出店時(右)は、「ただ立ち去る」だけ。店内にレジカウンターはない。2019年1月アメリカ?シアトルの1号店にて撮影
AI(人工知能)はあくまで手段であり、重要なのは「AIを使って何をするか」という目的です。例えばアマゾンにとって「ビッグデータ×AI」は、カスタマー?エクスペリエンス(顧客の経験価値)向上のための手段です。AIの活用においても、ビジョンやミッションの明確さが重要です。
第二の特色は、やはりビッグデータの蓄積にあります。AIは人を育てるようなもので、解析のための材料、つまりビッグデータがないと育つことはできません。各種プラットフォームを有するGAFAは、グーグルであれば検索履歴、アマゾンであれば購買履歴などの膨大なデータを所有しています。その量と質の差が、GAFAの優位性を揺るぎないものにしています。
アメリカではアマゾンが、リアル書店「アマゾン?ブックス」や無人レジ?コンビニ「アマゾン?ゴー」などを運営し、オンラインとオフラインの両方でデータを収集し始めています。個人に関するあらゆるデータを蓄積?解析することで、遠くない将来には「欲しいと思った時にはすでにモノが届いている」社会が到来するかもしれません。
第二の特色は、やはりビッグデータの蓄積にあります。AIは人を育てるようなもので、解析のための材料、つまりビッグデータがないと育つことはできません。各種プラットフォームを有するGAFAは、グーグルであれば検索履歴、アマゾンであれば購買履歴などの膨大なデータを所有しています。その量と質の差が、GAFAの優位性を揺るぎないものにしています。
アメリカではアマゾンが、リアル書店「アマゾン?ブックス」や無人レジ?コンビニ「アマゾン?ゴー」などを運営し、オンラインとオフラインの両方でデータを収集し始めています。個人に関するあらゆるデータを蓄積?解析することで、遠くない将来には「欲しいと思った時にはすでにモノが届いている」社会が到来するかもしれません。
GAFAのこれからとAI時代に必要なリテラシーとは。
GAFAに代表されるプラットフォーマーがビッグデータを独占しつつある中、2018年に起きたフェイスブックの個人情報流出が引き金となり、プライバシー保護への意識が高まっています。それを受けて、今後再評価されると予測できるのが「個人データの利活用はしない」と宣言しているアップルです。特に金融?医療?業務用サービスなどの利用に際しては、信頼性がますます重視されていくでしょう。
GAFAのサービスのほとんどは無料で利用できますが、それは同時に自分のデータを無償で提供していることを意味しています。だからといって、利用規約を全て読み、理解することは難しいでしょう。大切なのは、個人情報を提供しているという意識を持ち、データが実際にどう利活用されているのかを自分の頭で考えること。それがAI時代、データ時代に求められるリテラシーだと思います。
GAFAのサービスのほとんどは無料で利用できますが、それは同時に自分のデータを無償で提供していることを意味しています。だからといって、利用規約を全て読み、理解することは難しいでしょう。大切なのは、個人情報を提供しているという意識を持ち、データが実際にどう利活用されているのかを自分の頭で考えること。それがAI時代、データ時代に求められるリテラシーだと思います。
田中特任教授の3つの視点
- GAFAの根幹をなす「大胆なビジョン」と「ミッション」の源泉となるのはリベラルアーツの知見
- AIは手段であり、重要なのは目的
- 「自分のデータがどう利活用されるのか」を自ら考えることが大切
※本記事は 季刊「立教」248号(2019年5月発行) をもとに再構成したものです。 定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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田中 道昭
■近著情報(2019年4月発行)
『GAFA×BATH─米中メガテックの競争戦略』日本経済新聞出版社『アマゾン銀行が誕生する日─2025年の次世代金融シナリオ』日経BP社