立教と宇宙——果てなき空間の謎に挑む

理学部物理学科

2022/07/11

研究活動と教授陣

OVERVIEW

アメリカでは民間企業が初めて有人宇宙船を開発し、日本では民間人が初めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在するなど、宇宙関連のニュースが昨今、世界的に盛り上がりを見せています。立教大学では長年、理学部物理学科を中心として宇宙研究?教育に力を入れてきました。これは他大学にはない魅力的な特徴です。学生と共に最先端の研究開発に挑む研究者の姿や、宇宙に関する取り組みの数々をご紹介します。

左:渦巻銀河 左右:(提供:NASA)

未知の事象を解明し、
人間の本質的な疑問に答える



理学部物理学科長 教授
北本 俊二 KITAMOTO Shunji

1980年大阪大学理学部物理学科卒業、1985年同大学大学院理学研究科物理学専攻博士後期課程修了。大阪大学理学部助教授を経て、2001年より現職。日本天文学会理事などを兼任。


立教大学における宇宙研究?教育の歴史は古く、1949年の理学部物理学科誕生とともにスタートしました。理学部物理学科で宇宙物理学を専門とする北本俊二教授はこのように語ります。

「JAXA(宇宙航空研究開発機構)と歩調を合わせるように本学の宇宙研究は発展してきました。その研究レベルは日本の私立大学ではトップクラスです。本学が強みを持つ分野は大別して2つあります。1つは計算式などを用いて宇宙の成り立ちやブラックホールなどの謎を解明する理論系の分野。もう1つが人工衛星や探査機に搭載する装置を開発し、実際に観測する分野です」

後者では、小惑星探査機「はやぶさ2」のカメラの開発や、2022年度に打ち上げ予定のX線分光撮像衛星「XRISMクリズム」の観測装置の開発など、ニュースでも話題に上る最先端の研究開発に本学の研究者が参加しています。

JAXAと協働で研究を進めている研究者は多く、大学院生や学部4年次生も実際の宇宙開発プロジェクトに参加する機会が度々あります。

2016年に打ち上げられた、X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)を搭載したロケット。北本教授もプロジェクトに参加 提供:JAXA

「特に人工衛星に搭載する装置の開発や、打ち上げ前の動作試験、さらに、打ち上げ後のデータ解析には、学生たちの働きが大きな力となっています」

2018年度から立教大学とJAXAで組織間の覚書を締結し、「JAXA宇宙科学技術講義」を実施。JAXAの研究者から最新の研究成果を聞くことができる貴重な機会となっています。

「宇宙研究には、未知の事象を解明し、人間の本質的な疑問に答えるという大きな意義があります。また、宇宙研究を通して発展する技術は、あらゆる分野のテクノロジーの進化につながっています。例えば観測装置の開発には、材料、電気、コンピュータなどに対する広範かつ最先端の知識や技術が求められます。学生の皆さんも宇宙研究に関わる中で幅広い知識やスキルを得てほしいと願っています」

宇宙研究最前線

宇宙関連 TOPICS

立教大学における宇宙に関する近年のトピックスの一部をご紹介します。

JAXA宇宙科学技術講義[2018年度~]

JAXAの國中均宇宙科学研究所長による講義(2018年9月)

JAXAとの連携講座として、2018年度秋学期から「JAXA宇宙科学技術講義」(理学部科目)を開講しています。同授業ではJAXAの研究者による、実際の宇宙開発プロジェクトに基づく講義を展開し、宇宙科学への理解と学識を持つ人材の育成を目指します。全14回の講義のうち数回は、学内向け講演会として理学部以外の学生も受講できる機会としています。

小中高生への宇宙教育[随時]

「中高生チャレンジ★ラボ」の様子(2021年8月)

大学生以外への宇宙教育の機会も多数。2021年8月の「おもしろサイエンスワールド2021」では亀田真吾教授が豊島区の小中高生を対象に、はやぶさ2のエピソードなどを紹介。同じく2021年8月の「中高生チャレンジ★ラボ」では、北本俊二教授が宇宙に関する最新の話題について模擬体験を交えて紹介しました。

学部物理学科教員による 宇宙関連書籍[2021年2月]

『宇宙まるごとQ&A はやぶさ2からブラックホールまで』

2021年2月、北本俊二教授、原田知広教授、亀田真吾教授が執筆した『宇宙まるごとQ&Aはやぶさ2からブラックホールまで』が理工図書社から出版されました。宇宙に関する身近な疑問や最新の研究成果について分かりやすく解説しています。

著者:北本俊二/原田知広/亀田真吾(理学部教授)
出版社:理工図書
発行:2021年2月
価格:1,650円(税込)

金星の大気に関する研究[2020年4月/2021年7月]

金星の雲頂付近の循環のイメージ(金星画像はJAXA提供)

田口真教授、福原哲哉助教(当時)が参加する研究グループは、金星探査機「あかつき」による観測データに基づいて金星大気の高速回転(スーパーローテーション)の維持メカニズムを解明。その論文が2020年4月の科学雑誌『Science』に掲載されました。また、両名が参加する別の研究グループは、金星を覆う雲の運動を昼夜の区別なく可視化することに成功し、その成果は2021年7月の科学雑誌『Nature』に掲載されました。

超新星爆発に関する研究[2021年4月/6月]

超新星残骸のX線画像(ISAS/JAXA, Ohshiro et al.)

佐藤寿紀助教が参加する研究グループは、大質量星の「超新星エンジン」というべき仕組みをX線観測で解明し、2021年4月の科学雑誌『Nature』オンライン版に掲載されました。また、同助教が参加する別の研究チームでは、最も高密度な白色矮星による超新星爆発の痕跡を特定し、2021年6月に学術誌『Astrophysical Journal Letters』に掲載されました。

小林努教授が文部科学大臣表彰「科学技術賞 研究部門」を受賞[2020年4月]

小林努教授

小林努教授らの研究「最も一般的なインフレーション宇宙論の研究」が、科学技術の発展に寄与する独創的な研究?開発を対象とする、令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞 研究部門」を受賞。ここで与えた公式は、宇宙論だけでなく、拡張重力理論から重力波天文学に至るまで今日幅広く活用されています。

世界初!ガンマ線バースト残光から超高エネルギーガンマ線の検出に成功[2019年11月]

ガンマ線バーストの観測画像 H.E.S.S. Collaboration et al., Nature(2019)より

内山泰伸教授(現?人工知能科学研究科所属)が参加する国際共同実験プロジェクトチームが、10年以上の長きにわたる挑戦の末、宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」から世界で初めて超高エネルギーガンマ線放射の検出に成功。この研究成果は2019年11月の科学雑誌『Nature』に掲載されました。

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